息つく間もない交響曲

上岡敏之指揮、ヴッパータール交響楽団 ベートーヴェン:交響曲第9番 [COGQ-65]
上岡敏之指揮、ヴッパータール交響楽団 ベートーヴェン:交響曲第9番 [COGQ-65]

オペラと交響曲

 

11月6日にリリースされた上岡敏之とヴッパータール交響楽団による第九。

ヴッパータール交響楽団は、オーケストラ・コンサートの定期演奏会も行ないますが、普段は歌劇場のオペ・ピットに入って、オペラを演奏するオーケストラとして活動しています。

自然とオペラの呼吸が身に染み付いたオーケストラは、例えばモーツァルトなどを演奏させると、歌うように生き生きと伸びやかに音を奏で、それはオペラを演奏しないオーケストラとは一味違った音楽の喜びを見出してくれます。

 

上岡敏之、ヴッパータール交響楽団定期演奏会より (c) afi
上岡敏之、ヴッパータール交響楽団定期演奏会より (c) afi

が、ベートーヴェンは彼らにとって、ちょっと勝手が違うみたい。なにせ1曲しかオペラを残さなかったベートーヴェンですから、オペラハウスのピットのなかではめったに演奏する機会がありません。このオーケストラにとっては決して馴染みのある作曲家ではないのです。

しかも、《フィデリオ》はいわゆるオペラ的なオペラでは、ぜんぜんない。上岡に言わせると“息をするところがない”のだそう。

歌手にとっても、金管楽器にとっても、苦しい息継ぎを強いられるのがこのオペラなのであれば、ベートーヴェンの交響曲に至っては“息をしない音楽”ともいえるわけです。

 

“息をしない音楽”というのは、オペラを演奏することに慣れたオケにとっては、非常な葛藤なわけですね。歌わせてくれない音楽・・・。そんなわけで、音楽を刻んでゆく上岡のタクトと、歌に流れてゆくオケとのせめぎ合いが、この録音のなかから漏れ聞こえているのです。

 

ベートーヴェンのオペラ《フィデリオ》については、以前、女子クラ部でもご紹介したことがあるので、ぜひこちらをご参考に・・・女子クラ部facebook

 

 

CDの収録時間は「第九」によって決まった? 

 

俗説によって信じられている“CDの収録時間=74分は、カラヤンの第九の演奏時間によって決まった”という。これもまた第九をめぐる、真偽の確かでないひとつの伝説のよう(カラヤンの演奏は、みな60分台ですから、まさかそれが根拠になったことはないような・・・)。

ともかく、たいていの第九の演奏が74分に収まるようですから、第九の演奏時間がCDの規格の基準になったというのはもっともらしい話ですよね。

今回、上岡とヴッパータール交響楽団が演奏した60分の第九というのは、そうするとかなり速い部類の演奏に入ります。

 

でも、第九の演奏時間はなぜこんなに違うの・・・?

これもまたメトロノームの指示をどのように解釈するか、という第九の謎に原因のひとつがあります。今まで(巨匠たちの時代に)考えられてきた第九のテンポのイメージからすると、メトロノームのテンポ指定は、ある部分ではとても速すぎるように感じられていたのですね。

だから、それは書き損じだったのだとか、その指示を聞いた甥のカールの間違えなのだとか、メトロノームが壊れていたのだとか・・・さまざまな極論が飛び交っておりましたが、古楽の演奏家たちがベートーヴェンに手を染めるようになって、「第九」のテンポ感も以前とはまったく異なったものになりました。荘重な演奏というより、爽快ささえ感じられます。

 

あなたが今年聴く「第九」は、どんな演奏で皆さんを熱狂に巻き込むでしょうか。

Share us!

Twitter

Facebook

Google+

メールマガジン

女子クラ部主宰のイベントやご招待&プレゼント、作品情報・・・など、毎月1回メールマガジンを配信しています。メールマガジン登録及び配信は無料です。是非ご登録ください。

サンプル
メールマガジンsample.txt
テキスト文書 7.3 KB