バッティストーニに迫る!③ジェノヴァから世界へ羽ばたく若き天才

カルロ・フェリーチェ歌劇場より
カルロ・フェリーチェ歌劇場より

バッティストーニの魅力に迫る加藤浩子さんの連載第3回は「ジェノヴァから世界へ羽ばたく若き天才」ということで、バッティの本拠地、イタリアはジェノヴァのカルロ・フェリーチェ歌劇場より出張レポートです。

この若きマエストロについてオケの面々はどう感じているのか、

気になるところです。

 

では、早速どうぞ。

 

―――ジェノヴァから世界へ羽ばたく若き天才

ジェノヴァ、カルロ・フェリーチェ歌劇場とバッティストーニ

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 「すごいエネルギーよねえ」。

 ふう。休憩時間、楽屋で一息入れていたオーケストラメンバーのある女性は、手を扇子のようにぱたぱたと振って、暑さをしのぐまねごとをしてみせた。

 「彼は素晴らしいよ。本当に才能があると思う」

 これは、別のメンバーの意見である。

カルロ・フェリーチェ歌劇場、夜の風景
カルロ・フェリーチェ歌劇場、夜の風景

 北イタリアの港町ジェノヴァにある、カルロ・フェリーチェ歌劇場。この連載の第一回でも触れた、イタリアを代表する名門歌劇場のひとつだ。第2次世界大戦で破壊されたが、  戦後再建され、町の中心部のフェラーリ広場に、ギリシャ神殿のような壮麗な姿を見せている。

 アンドレア・バッティストーニは今年1月から、この劇場の「首席客演指揮者」のポストにある。冒頭の発言は、この3月、彼の指揮で「イタリア・オペラ名曲集」のコンサートを行った時の、歌劇場のオーケストラメンバーの声だ。ちなみにこのコンサートは録音されており、バッティストーニのCD第3弾として、日本コロムビアから来年発売予定である。

 第1回でもご紹介したように、バッティストーニは総裁の肝いりでカルロ・フェリーチェ歌劇場にやってきた。昨年2月にここで指揮した初めてのオペラ、ヴェルディの《マクベス》は大成功。「とてもよかった。ヴェルディが、彼のドラマティストぶりを初めて本格的に開花させた作品。オケもよく応えてくれた」(バッティストーニ。以下B)と、本人もできばえには満足していたよう。年末年始には、カルロ・フェリーチェでは実に45年ぶり!というヴェルディの大傑作《オテッロ》を振り、「イタリアの有名紙『コッリエーレ・デッラ・セーラ』で、「今シーズンのナンバーワン公演」に選ばれた」(劇場の広報担当の言葉)超名演を成し遂げた。キャストも、タイトルロールに、ベルカントからオテッロ役に進出して絶賛を浴びているグレゴリー・クンデ、デスデモナに、イタリア・オペラ界の若手スターとして引っ張りだこのマリア・アグレスタ、ヤーゴにスペイン出身のベテラン、カルロス・アルヴァレスと、現在望みうる最高のキャスティング。初日を観に行ったミラノ在住のある日本人ジャーナリストが、「今の時代、こんな凄いオペラが、と言えるほどの《オテッロ》をジェノヴァで体験。咳払いひとつできぬほどの緊張感」と休憩時間にフェイスブックで呟いていたのが印象に残っている。

 私もストリーミングで試聴したが、凄まじい、のひとことに尽きる異次元の演奏だった。《オテッロ》という作品はイタリアの歌劇場にとってチャレンジングなオペラであり、その半世紀ぶりの上演に際して指揮を任されるということは、それだけ期待されている証拠だといえる。

 

(注:ちなみにこのときの《オテッロ》は、カルロ・フェリーチェのストリーミングサイトにて、オンデマンドで(3.99ユーロかかりますが)視聴することができます。絶対に損はしません、観てください!!

http://www.streamingcarlofelice.com/otello.html

カルロ・フェリーチェ歌劇場管弦楽団コンマスのジョヴァンニ
カルロ・フェリーチェ歌劇場管弦楽団コンマスのジョヴァンニ

 バッティストーニとオーケストラや合唱団の関係がいいことも、名演が生まれたことと無関係ではないだろう。彼自身も、「若い音楽家も多いし、みんなやる気がある」と、カルロ・フェリーチェでの仕事にやりがいを感じているようだ。今年のニューイヤーコンサートの指揮もバッティストーニが任されていたが、アンコールの《ラディッキー行進曲》では、もともとチェロを専攻していたバッティストーニが、首席チェロ奏者に席を譲られ?てチェロを演奏するサプライズ演出もあり、オーケストラとの間がうまくいっている様子が感じ取れた。

 「バッティストーニはほんとうに才能がある」

 イタリア出身だが、フランスやスペインなど国外の多くのオーケストラで演奏してきたコンサートマスターのジョヴァンニ・バッティスタ・ファブリース氏も、そう言う。「とくにイタリア・オペラの指揮は最高だ。よく歌うし、ドラマの感覚がある」

 コンサートマスターの絶賛の言葉をきいて、私は「イタリア・オペラ名曲集」のコンサートで聴いた、《マクベス》のバレエ音楽を思い出していた。その場の情景が浮かび上がるような凄みとドラマ性に満ちた演奏だったけれど、そういえば彼らは去年、バッティストーニと《マクベス》の全曲を演奏したのだった。あのバレエ音楽を聴いただけで、共演がうまくいっただろうことが想像できたのだ。

バッティストーニ氏、カルロ・フェリーチェの楽屋にて
バッティストーニ氏、カルロ・フェリーチェの楽屋にて

 ひょっとして彼らは、バッティストーニが音楽監督や常任指揮者といった、もっと重要なポストに就くことを望んでいるだろうか?

 「彼はこれから、国際的な、重要なキャリアを築いていくだろう」

 ファブリース氏は、ちょっと考えてそう言った。

 「今はまだ、特定のポストに就かない方がいいと思う。内外のいろんな劇場で経験を積むほうが、彼の将来にとっては大事だろう」

 その言葉をきいて、私は心の内側がほんのり温かくなるのを覚えた。

 内外のオペラの現場を見てきたイタリア人音楽家の、将来有望な指揮者へのあたたかな視線。そんな視線に見守られ、バッティストーニは、ジェノヴァからさらに大きく羽ばたいて行くことだろう。

 

文:加藤浩子

さて、バッティストーニがカルロ・フェリーチェでオペラを指揮する姿を観たい!!という皆さまに、ライヴ・ストリーミング情報をお届けしましょう。

前回、5月9日のストリーミングはなんと劇場のストにより公演中止という非常事態に見舞われましたが、今度は必ずや上演されるはず。

5月31日(土)現地20時からの放送・・・ということは、日本では翌日曜日の朝3時;;

演目は《カルメン》です!

http://www.streamingcarlofelice.com/carmen.html

 

カルメンは、アンヌンツィアータ・ヴェストリ

ホセは、ファビオ・アルミリアート

 

女子クラ部でも、きっとライスト実況中継をすることでしょう(起きていたら)。

ぜひ来週末をお楽しみに。

そして、加藤さんの連載もまだまだ続きます!

連載第4回は「若き天才は、イタリア・オペラを救えるか?」

・・・偉大なオペラ指揮者とはどんな存在なのか、そして今回のストにも関連するイタリアの歌劇場が直面する問題についても語られます。

 

特集第1回第2回もぜひご覧ください。

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